遠藤周作の生誕100周年だそうで。

キリスト教徒の小説家

とあるきっかけで、今日がまさに
小説家・遠藤周作の生誕100周年だということを知った。

洗礼をしている作家なので、
キリスト教(キリシタン) 関係の小説が多く、
かつ、記念館も長崎にあるので、
長崎県の作家かと思っていたのだけれど、
実は東京生まれの小説家だとのこと。

ゲゲゲの鬼太郎の水木しげるが去年生誕100年だったので、
その一つ下の年と考えるとなんだか感慨深い。

戦争を経験した作家がどんどん減りつつあることを実感する。(大江健三郎も含め)

せっかくの節目なので、
キンドル版を軽く読み返してみたら、
圧倒的な人間味のあるドラマで改めてその気迫に圧されるばかり。

やっぱり代表作は『沈黙』
いくつか引用すると、

神はなぜ、このような苦難を信徒たちの上にお与えになるのか、私にわからなくなることがあります。

人間には生れながらに二種類ある。強い者と弱い者と。聖者と平凡な人間と。英雄とそれに畏怖する者と。そして強者はこのような迫害の時代にも信仰のために炎に焼かれ、海に沈められることに耐えるだろう。だが弱者はこのキチジローのように山の中を放浪している。お前はどちらの人間なのだ。もし司祭という誇りや義務の観念がなければ私もまたキチジローと同じように踏絵を踏んだかもしれぬ。

キチジローの人間臭さや構成の仕方がうますぎるし、
何度読んでも考えさせられる一冊。

スコセッシ監督が映画化したけど、
小説のイメージが壊されそうでまだ観てないんよね・・・。

 

 

『海と毒薬』もやっぱり良い。

「強制しているんじゃない。ただ、承諾しなくても、これは絶対、秘密にしてもらわねば困るぜ」 「何です。それは」 「アメリカの捕虜を生体解剖することなんだ。君」

「神というものはあるのかなあ」 「神?」 「なんや、まあヘンな話やけど、こう、人間は自分を押しながすものから──運命というんやろうが、どうしても脱れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」

「あの捕虜を殺したことか。だが、あの捕虜のおかげで何千人の結核患者の治療法がわかるとすれば、あれは殺したんやないぜ。生かしたんや。人間の良心なんて、考えよう一つで、どうにも変るもんやわ」

誰の心にもある”良心”と”悪”をえぐるような作品。

実際にあった話をもとに、
ここまで話をふくらませるのはやっぱり小説家ってすごいな・・・と思うばかり。

今読んでも決して損することがない名作なので、
まずは短めの『海と毒薬』から読んでみては。

遠藤周作生誕100年記念事業公式サイト

今日はそんな感じで。
かわなみ

よかったこと:以前行ったイベントから、意外な繋がりがあって嬉しかった。

大江健三郎が亡くなった。

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