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京都文学賞を受賞したグレゴリー・ケズナジャット氏の
『鴨川ランナー』がなかなか良かったので、
第168回芥川龍之介賞の候補になった最新作『開墾地』を読んだ、とうか
オーディオブックで聴いてみた感想をざっくりと。
レビュー・感想
前回の舞台は京都だったけれど、
今回は日本での留学中、論文を書く合間に
父のいるアメリカへ戻って、という話。
ということでいつも通り箇条書きでざっくり書評を。
・時差で頭がぼーっとしている様子を描いた文章がすごく良かった。
・葛がはびこっている、それ自体を比喩に
主人公の気持ちが描かれていくのがなかなか興味深い。
・葛のつるとの戦い
前進・後退あれど、いつかは必ず葛に覆われる宿命。
・日本から持ってきた書籍が アメリカの部屋ではなぜか権威なく見える描写がなんともリアル。
(おそらく実体験なんだろうなと)
・父親が別の言語で電話している様子
性格も変化し、顔の筋肉も緩むような描写が現実感があってよかった。
・悲観的な視点が多いので (実体験がそうだったのかもしれないけれども)
良い面についてももうちょっと掘り下げると読者としては読みやすいかも。
・ “ペルシャ語へ自由に移動できる父が羨ましかった”
・ナレーター(声優)も雰囲気にハマっていて、没入感があった
・言語の狭間での揺らぎ
・差別的なのはアジア人や黒人だけじゃないんだなぁと。
・自分の中にある母語から逃げられない、という表現。
・パスポートがない子供時代ののラッセルはイランに行けない、とかそういうことあるんだ。
というか海外ではそれが当たり前なのかも。
日本人の大半が(良くも悪くも)経験することのないことを
追体験できるのがグレゴリー・ケズナジャットさんの小説の特徴で、
今回もそれが遺憾なく発揮されていてよかった。
別のルーツを持つ、ということがこういう小説を読むと
ちょっとうらやましくも感じることがあるけれど
つまるところ「よその芝生は~」というやつなんだろうか。
短編集の『単語帳』も、
知らない間にキンドルで配信されているみたいなので、また読んでみたい。
ただ、第二言語に関する内容が続いているので、
次は違うテーマの作品も読んでみたいなと思ったり。
今日はそんな感じで。
かわなみ
今日のよかったこと:
涼しくて過ごしやすい夜だった。
Mobyの「Slipping Away」の新録ver.が良い。
・京都文学賞を獲った『鴨川ランナー』について
鴨川ランナー: 京都文学賞の小説を読んだ感想