京都にまつわるミステリー小説
ブラジリアン柔術仲間、桃ノ雑派という作家さんが小説を書かれたそうなので、
さっそく読んでみた感想を書いてみようかなと。
新刊のタイトルは『蠟燭は燃えているか』。
色々意味深な題だけに・・・。
あらすじなどは以前紹介した記事にて。
タイトルやあらすじからは、
三島由紀夫の『金閣寺』とか京アニ事件とかを思わせる内容。
軽いネタバレありで感想を書くので、
まだ未読の方はここで止めておくとよいかも。
感想・レビュー
『ろうそくは燃えているか』の印象に残った部分や感想をざっくり箇条書きで。
・ここ京都で起こった社会問題をあれこれ詰め込んでいるにも関わらず、小説として破綻なく、かつ読みやすくまとめられているのが凄い。
(オーバーツーリズム、コロナ、SNS炎上、迷惑系Youtuber、マイノリティー、カルト宗教、京アニ事件 etc…)
そもそも加害者も被害者も、わずかな差でしかないのかもしれない。
P252より
・中盤で、犯人の動機に関する答えが示されるので、
どうも、これだけじゃなさそうだな、後半に何かあるはず・・・と思いきやまさかの展開
・後半の100ページほどはまさにページターナーで、怒涛の展開一気読み
・藤城さんを追うところやラストシーンはなんだかコナンの映画を見ているぐらいの迫力だった。
・人はたくさん死ぬけれど、グロやスプラッター描写はそれほどキツくないのが助かる
・たわわ君が動き出すところは、ふと逆転裁判を思い出したり。
・具体的な地名がかなりの頻度で登場するので、土地勘のない京都人以外の読者が読んだ時、どんな印象で読まれるんだろう?と気になったり。
・京都という土地に興味を持たせてくれそうな知識がちょくちょく挿入されるのは◎
・”セキュリティーの高いアプリ”がやたらと
おそらくテレグラムのことだと思うけれど、編集者にとめられたのか、商標の都合なのか、
・レーズンの伏線がああやって回収されるのは地味に感心した笑
・SNSの荒れ具合なども妙にリアルなとこが○
・確かに加害者はどれだけ叩いてもOK、みたいな風潮はなんとかしないと…
・クイーンやボウイの音楽が流れるところも、作者の趣味が知れてよかった
・最後の螺旋階段で京アニ事件を思い出し、最後は炎上するのかと思いきや・・・
別の驚きの展開だった
・京都タワーが蝋燭でなく灯台をモチーフにしたものだというのは京都人だけど知らなかった
ちょっと無理があるかなぁ、と思ったのは下記三点。
・学生の設定である女の子の京都弁が、やけにコテコテで、おばちゃんみたいに聞こえる時がよくあった
・文化財がそんなに容易く燃えるわけはない?
・地図アプリに移ったのに、別のプレハブ的な場所にいて見つからななかった、的な設定は、読者としては煙に巻かれた気がする?
・・・それでも、ミステリーとして大きな破綻がないので、
とても完成度の高い小説だった。
京都の色んな文化財を燃やしまくり、
あらゆる方向に喧嘩を売るような挑戦的な小説、ほんとによく書いたな~と。
内容があれだけ重いテーマなだけに、
書きにくい部分もあっただろうけれど、
独特のユーモアと二人の会話劇で、うまいこと物語世界に没入できた気がする。
桃野雑派さんとは、柔術の練習中に話すこともあるので、
普段こんなことを考えてるんだなぁ、と不思議な読書体験だった。
決して難しくて読み切れない、という複雑さではないので、
普段ミステリーを読んでない方にも、前作を読んでない方でも、おすすめできる一冊。
僕自身も桃野雑派さんの小説は初体験だったけれど、
十分に楽しめたかなと。
もう一度再読するので、
また思ったことがあれば追記しておきたい。
今日のよかったこと:
ひさびさに晩酌(普段めったにしない)したけど、たまに飲むビールはうまい。